いじめは全世界に共通する社会問題といえます。
その歴史は古く、中学や高校の古典なんかでも、いじめを扱った話はよく出てきます。なんなら、人間以外でも、ある程度の知性を有する動物は当たり前のようにいじめを行っています。
倫理観、道徳観が多少進歩したであろう現代においても、学校、職場、近年はsns上などでもいじめは頻発しています。もはやあって当然みたいに。
ですが、いじめを受けた者が被る心身的なダメージは計り知れないものです。いじめを受けたことのある人は良くわかる痛みだと思います。
そんないじめを受けやすい人の特徴と、それらが被害者に及ぼす悪影響、トラウマの克服方法をまとめてみました。いじめに今悩まれている方、いじめを経験して自分を否定的にとらえている方、嫌な記憶の乗り越え方が分からない方はぜひ、参考にしてみてください。
いじめを受けやすい人の特徴
「どこに行ってもいじめられる」そのように自分を認識している人はいじめを経験した人の中には多いと思われます。では、いじめを受けやすい人はどのような特徴があるのでしょうか。
- 体力・腕力・運動能力が低い…学校でのいじめ、特に男の子に多いようです。いじめっこは基本的にいじめやすい相手を標的にするので、物理的に反撃される可能性の低そうな相手を標的にしやすい。確かに、男性においては、筋肉ムキムキの人がいじめられることってあまりなさそうですよね。
- 知的発達が遅れている…知的に遅れている人は、職場において人よりミスが多い、学校では周りの学習震度についていけない、空気が読めないなどで標的にされやすい。また、彼らは、からかわれていることに気づけなかったりするので、からかわれがちになる。
- 情意的な欠陥がある…内気、臆病、自信がない、自分より強いと思う対象に従いがちな人は攻撃性の高い人間に付け込まれやすい。自己主張や強い態度をとれないからですね。
- 社会的に孤立している…友達もなく集団から孤立している人は、だれも手助けする人がいないだろうという安心感から標的にされやすい。これは前述の「体力・腕力・運動能力の劣るもの」の女バージョンっぽい感じですね。私も、経験上、女性は社会的な強弱でいじめの標的を判断している傾向が強いように思いますし。
- 目立ちやすい…学校においては、際立った優等生や、母子家庭の子。職場においては、皆と協調できない者、学歴が低い、あるいは、高い者など、何か特別に目立つ点があると、いじめの対象になりやすい。
- 非認知スキルが低い…非認知スキルとは、試験などで数値化するのが難しい内面的スキルのことで、「周囲との円滑なコミュニケーション力」「意欲や新たな発想力」「感情のコントロール力」などのことです。これらの能力が低い人は、平均的な人と比べていじめにあう確率が高い
参考文献:file:///C:/Users/Owner/Downloads/10.pdf https://phys.org/news/2022-02-bullying-school-hamper-skill-healthy.html
これらの要素が重なるとき、いじめを受ける確率は高くなるようです。いじめられやすい人は、目立ちやすい要素を持った人、対人スキルの低い人、能力の劣る人などが該当するようです。いずれにせよ、その集団において、他の人と異なる要素を持つということはどんな状況でも当てはまるのかなと思います。
いじめがもたらす悪影響
いじめは被害者に様々な問題を引き起こします。まあ、まとめたからってどうにかなるものではありませんが、いじめはこんだけ恐ろしいんだよという啓発や、いじめられたことのある人に、自分に当てはまるものを知ってもらうことで、対策へとつなげることもできると思うのでまとめておきます。
- 脳が縮小する…イギリス、アイルランド、フランス、ドイツの若者682人を対象にした調査では、継続的ないじめを受けた者の脳の特定の部分が縮小していることが分かりました。その部分とは、脳の中心部に位置する「被殻」と「尾状核」で、被殻は意思決定と運動能力、尾状核は学習と記憶、言語理解、運動、抑制に関与しています。
- 腸内に大ダメージを及ぼす…UCLAで行われた研究によると、腸内細菌が乱れている人は、過去に精神的なトラウマを負っているケースが多いとのこと。また、腸内環境のダメージが大きいほど普段からうつや不安に苦しむことが多いとのことで、少し間接的かもしれませんが、いじめ(特に子どもの頃)を受けた人は、腸内環境が悪く、鬱、不安を感じやすいのではないでしょうか。
- 何度もいじめを経験してしまう…パデュー大学の経済学の助教授であるミゲル・サルソサさんの研究によると、いじめの被害にあった人は先ほど解説した「非認知スキル」が低下し、このスキル低下によって、再びいじめを経験する可能性が高まるとのこと。一度いじめにあうと人間不信になったりで悪循環に陥りがちですよね。
- 大人になって精神症状に苦しむ…またまたサルソザさんによると、いじめを経験した人は、うつ病、薬物乱用、自殺願望、希死念慮などを抱えるリスクが高くなるらしいです。
悪影響は個人差がありますのでこれ以上の問題を抱えている方もおられるかと思います。いずれにせよ、いじめの経験はその後の人生を狂わせかねないものであることは確かです。
私含め、いじめ被害者、加害者に問わず、我々は他の誰かの気持ちを容易に傷つけられることを自覚して、他者を思いやりながら生きていけたらいいんですけどね。
いじめのトラウマ克服法
ここからは、いじめを経験して、その記憶を今も引きずっていますという人に向けて、トラウマ克服に良さげな方法をまとめてみます。
- 思い浮かんだことを紙に書きまくる…テキサス大学のジェームズ・ペネベーカー博士は「自分の気持ちを紙に書くとメンタルが改善するぞ!」と半世紀近く主張し続けている人で、これは彼がうつ病から脱した経験をもとにしているそう。
彼の研究によると、1日20分、トラウマ体験を紙に書きなぐることで、鬱と不安の傾向が減り、幸福度が増すこと、血圧が下がり、免疫力が向上することが分かりました。
ペネベーカーさんによると、きつかった体験を紙に書くことで客観性が鍛えられるとのことで、後述のマインドフルネスと似た効果があります。
ペネベーカーさんの書きなぐり法はあとでご紹介します。
- マインドフルネスを活用する…前にもまとめていましたが、マインドフルネスというのはストレス解消、客観性の向上と様々な効果があり、これはトラウマの改善にも効果があるそう。瞑想のやり方と効果を詳しく知りたい方はこちら。
- 積極的に自然に触れる…この記事でもまとめていて、もはやこのブログの準レギュラーに近いのですが、ネガティブな思考や感情を何度も考え続けることを「反芻」といいます。これはトラウマを抱えている人に顕著にみられる心理状態であり、この傾向が強い人ほど抑うつや不安に苦しみやすいことが多くの研究で示されています。
その反芻に効果が高いといわれているのが、自然の中を歩き回ることで、反芻思考のレベルを調べた後、90分ほど自然の中を歩いてもらった研究では、大半の参加者は散歩中に反芻思考の回数が減って、前頭前野(悩みが多いとここ、特に右の前頭前野が活発に動く)の活動も低下することが分かったそう。
いじめの記憶や嫌な感情、人前や家の外に出ると不安感や嫌な思考でいっぱいになっちゃうという人は、ちょっとお出かけして自然に触れてみてもいいかもしれません。
- 腸内環境を整える…先ほども述べたように、トラウマを抱えている人、不安感を感じやすい人は大体腸内環境が悪いです。ですから腸内環境を整えることがトラウマを乗り越えるのに役に立つのではないでしょうかということです。ただしここら辺の因果関係(トラウマを抱える人の腸内環境が悪いからと言って、腸内環境を整えてトラウマが改善されるの?)は現代化学では解明しきれていない感があるので100%とは言えません。ですが体にいいのは確かです。
具体的な方法は、1.発酵食品(やはり日本人は納豆や味噌がおすすめとのこと)を食べる 2.腸内細菌アプリをとる 3.適度に(週に2時間くらい)運動する 4.アウトドアに勤しむ
まとめると、これら4つの手法は、科学的にある程度のデータが得られているので、実践してみる価値はありそうです。もちろん、これ以外にも手法はありますし、一人ではよくわからない方はカウンセリングなども受けてみるといいと思います。
書きなぐり法
先ほどのペネベーカーさんがおすすめする書きなぐり法をまとめてみます。メンタルに効果がありそうです。
- 書く時間は20分
- 筆記用具はなんでもいい(PCでもいい)
- 感情的にきつかった体験を書きまくる
- 文章のうまさ、まとまり、起承転結は気にしない。心に浮かんだ考えや感情をひたすら書いていく。
- 最低でも3日は続ける
- 書き終わった文章は捨ててもいい
以上です。簡単そうですね。みなさんも暇な時間があったらやってみてください。気持ちの整理と客観的な観察に役立つかもしれません。ペネベーカーさんの本は下にリンク貼っておきます。
まとめ
いじめにあいやすい人と、悪影響、トラウマの乗り越え方をまとめてみました。
今回の重要ポイントは、
- いじめは目立ちやすい要素を持つ人が標的にされやすい
- いじめの被害者は、心身両面にダメージを負い、その影響はその後の人生にも表れる
- 乗り越えるには、書きなぐり法、マインドフルネス、自然、腸内細菌サプリを活用しよう!
この3点です。
今回紹介したもので自分に合いそうなものがあれば、無理せず、そして過剰に(1日、2日取り組んだら治るなど)期待しないように、地道に取り組んでいってみてください。決して簡単なことではないし、きついと思います。孤独を感じることもあるでしょう。ですが、同じような経験をして、何とか立ち直ってきた人達は確かにいます。あなたは一人ではありません。
ペネベーカーさん本
こころのライティング―書いていやす回復ワークブック