前回の続きです。
前回の記事では、古賀史健さんの著作、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』を参考に、「読者をひきつける文章の書き方」をまとめました。
今回の記事では、「文章推敲のコツ」がテーマになります。
- うまく推敲して無駄のない文章にしたい
- 書いた文を削るのがもったいなくて、推敲がうまくいかない
- 文章のどこをどう削ればいいのか分からない
- 書くべき題材がみつからない
方に参考になるかと思います。
文章に「ハサミ」をいれる
推敲というと、その言葉の由来どおり、「推」を「敲」にいれかえるような、単語レベルでの書き直し作業をイメージする人が多いです。
しかし、古賀さんによると、本来、推敲は映像作品における編集と似ている作業で、文章の差し替えや切り落とし、足りない部分の補足など、もっと広範囲に及ぶもののようです。
そして、推敲には、「書き終えた後の編集」と、「書き始める前の編集」の2段階が存在します。
「何を書くか」より「何を書かないか」
まずご紹介するのが、「書き始める前の編集」。
やるべきことは1つだけ。「元ネタの編集」です。
元ネタの編集のコツは、「何を書かないか」を見極めることです。
「何を書くか」でなく「何を書かないか」を考えるメリットは
- 自分が本当に大切にしているものや、自分の価値観がわかる
- 自分への理解が進むことで、「何を書くか」が明確になる
- より相手に伝わりやすい文章になる
ことです。ここでは、その理由を解説します。
例)例として、「高校時代を振り返って」というテーマで作文を書くとしましょう。
この時、「何を書くか」を基準に考えていると、かなりの確率で、発想が”たし算”になります。つまり、「部活の事を書こう、文化祭の話を書こう、修学旅行の事も書きたい」とどんどん書きたいことが増えていってしまうわけですね。結果として、読者からすれば話のポイントの分からない、残念な文章になってしまいます。
一方、「何を書かないか」を基準に考えると、発想が”ひき算”になります。様々なトピックを元ネタとしながら、「何を書かないか」を考えると、自分が本当に書きたいテーマだけが残ることになります。
そのため、「何を書かないか」は自分が本当に大切にしているものや、自分の価値観の理解につながり、何を書くかが明確になるわけですね。
また、読者にも書き手の人間性が伝わりやすくなること、読みやすく、文章を通して伝えたいことがはっきりすることで、読者にとっても読みやすい文章になります。
「書かないこと」を見極める方法
「書かないもの」を見極めるには、頭の中のごちゃごちゃしたイメージを整理する必要があります。
第1回「文章をうまく書けない原因と解決策」にも書きましたが、うまく文章が書けない原因は、頭の中のイメージが整理しきれていないままに文章を書こうとすること。
そして、頭の中身を整理する方法は、それを”可視化”することです。
それはつまり、「紙に書きだす」方法になります。
具体的なやり方としては、
- 文章のテーマについて、思いついたキーワードを10個以上書きだす
- 書きだしたキーワードを観察して、それらの傾向をみつける
- “その傾向以外のこと”に限定して、さらに10個以上キーワードをだす
- 合計20個を上回るキーワードの中から、「何を書かないか」を考える
例)「最近のテレビ」をテーマにして文章を書くとします。
- まず、思いついたキーワードを書きます。「つまらない」とか、「下品なバラエティ番組ばかり」とか「歌番組が減っている」「プロ野球中継も減っている」「NHKのドキュメンタリーは面白い」など。
- それらのキーワードの中から、共通点や法則性を探します。かっこよく言うと抽象化。今回は、「番組内容が中心」ということが分かります。
- 番組内容以外のキーワードを10個考えると、「最近は雑誌もつまらない」や「youtubeの方が面白い」などになります。
- その中から「書かないこと」を見つけます。
こんな感じでやっていくといいでしょう。
なぜこんな面倒な作業をやる必要があるかというと…
- 普通にキーワードを書きだしただけでは発想に偏りが出てしまう可能性がある
- 偏りのあるキーワードだけで考えた文章は伸びしろがなくなってしまう
- 文章を書くことは、自己陶酔や視野狭窄になりがちなので、「それで面白い文章が書けるのか?」「本当にこれですべて書いたか?」と自分を疑う姿勢が必要
だからだそうです。古賀さんいわく、古賀さんや、この本を読んだ私、この記事を読んでいる方々もおそらく、”天才”ではないので、急にすばらしいアイデアが降ってくることなんてまずありえないだとか。私に関しては反論の余地なし…
だから、自分の中にある「元ネタ」を根気強く取り出し、峻別していく必要があるそうです。自分の力を過信しすぎないよう注意して、自分を疑い続けることが、いい文章を書く秘訣のようです。(肝に銘じておきます)
「書いた後の編集」って何をすればいい?
ここからは、「書き終えた後の編集」について、どうやればいいのか、どういったメリットがあるのか解説していきます。
「書き終えた後の編集に関しては、やるべきことは4つ。
- 長い文章を短く切り分ける
- 文章の論理性をチェックする
- 細部がどれだけ描写できているかチェックする
- 最低2回以上は読み直す
順番に解説していきます。
まず、文章を短くすること。これには、3つの利点があります。
- 冗長さを避けてリズムをよくする…だらだらと続く文章は、とにかく読みにくいです。特に、読点を3つ4つと使ってつなげている文章は、どこかで切りどころを考えるべきとのこと。(勉強になります…)
- 意味を通りやすくする…便利な接続助詞”が”を多用してつなげた長い文章は、切り分けて接続詞に置き換えましょう。”が”が多義的であることが裏目に出て意味が伝わりにくくなります。それとは逆に、短く切って接続詞でつなげてやると、意味が通りやすくなります。
- 読者の不安をやわらげる…日本語で長文を書いてしまうと、「今何の話をしているのか」「結論は何なのか」が不明瞭で、読者は集中して読むのが難しくなります。ですから不必要な部分は削ってやると、いいたいことが伝わりやすくなります。
次に、論理性のチェック。これは具体的にどういうことかというと、「自分の文章を図にすることはできるか」をチェックするということです。論理が破綻していなければ、その主張や論理展開をシンプルな図に書き起こせるとのこと。
次は、細部がどれだけ描写できているかのチェック。具体的な考え方は、「この文章を読んで、”映像”が思い浮かぶか?」を問うこと。ひたすら感情や抽象的な言葉ばかりが並べられた文章ではなく、細部の描写がしっかりできていれば、自然とイメージは浮かぶはず。面白い小説とかも大抵そうですもんね。
最後に、最低2回以上は読み直す。これはなぜ2回かというと、推敲は気分に左右されるものだからです。書いたときにはAが良かったと思っていても、次に見たときにはBがいいと思うかもしれません。このように、“編集者としての自分”というのはあまり当てになるものではないので、2回以上の見直しが必要だとか。
まとめ
今回は、「文章推敲のコツ」をまとめました。
今回の重要ポイントは
- 「何を書くか」より「何を書かないか」を考える
- 「何を書かないか」は紙に書きだして考える
- 書き終えた後は、長い文章を短くし、論理性、細部の描写をチェックし、2回以上は読み直そう
以上の3点です。
古賀さんは、この本のラストで、「いい文章を書くのに、文才など全く必要ない」と断言しておられます。「いい文章」を書くために何より必要なのは、自分の「思い」を知り、それをどのようにして「言葉だけ」で正しく伝えるのかを考える意識と、そのための技術を身につけることだそう。
また、「自分には文才がないんじゃないか」と憂うのは、あきらめのための材料を探しているだけなんじゃないの?とのこと。
才能など気にせず、とにかく書くことと、読む人に自分の思いを伝えようとすることが大事なようです。
それでは、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』の書評・要約は今回で終わりになります。ちょっと長くなりすぎましたね~。
本の方では、ここでの記事以上に、丁寧で分かりやすい解説が古賀さん本人の文章で書かれていますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。