止まらない頭の中の声をコントロールする方法②|イーサン・クロス「Chatter 頭の中のひとりごと」【書評・要約】

こんにちは。三本京です。

【書評・要約】は、三本が、読んだ本の個人的重要ポイントと感想をご紹介するコーナーです。

前回に引き続き、「Chatter 頭の中のひとりごと」の書評・要約です。

今回は解決編。クロスさんが紹介するチャッターの対処法をまとめていきます。

目次

やってはいけないChatterの対処法

他人と感情を共有してもチャッターは減らない

前回の記事でも述べたように、私たちは、ネガティブな感情を喚起させる状況下では、その感情を他人と共有しようとする傾向があることが分かっている。

しかし、2000人を対象とした、ワールドトレードセンター崩壊後の人々の行動と、その後の心身の健康の調査によって、ネガティブな経験を他人に話したところで、私たちを回復させる有意義な助けにはならないことが判明した。

その理由は主に3つ。

  • 「解決策」より「共感」を優先するから…心が傷ついたとき、私たちは真っ先に「感情的な欲求」を満たそうとする。感情的な欲求とは、「誰かに理解してもらいたい」「自分がどこかに帰属していることを確認し、安心したい」といった欲求だ。

  また、私たちにはもう一つの欲求を抱えていて、それを「認知的な欲求」と言う。認知的な欲求とは、問題の取り組み方、解決策を求める欲求だ。

問題なのは、心が混乱し、傷を負っている状態だと、人は解決策よりも共感を求めすぎてしまうことだ。これによって、事態は前に進まないばかりか、次の問題を発生させる。

  • 「共同反芻」が事態を深刻化させるから…他人に、自分の身に起こったことを詳細に話をすることで共感を得ようとするが、その過程で私たちは最悪な感情と経験を追体験し、ネガティブな感情や生物学的な脅威反応を強めてしまう。

  また、経験のネガティブな側面に注目するあまり、関連するネガティブな思考まで活性化してしまうことがある。いやなことを考えていたら次から次へと嫌な考えが広がっていくのもこの例。

  • 他人からの支援が自己効力感を損なうこともあるから…相談相手のアドバイスが、自分のニーズを満たしていない場合(よくある見当違いなアドバイス。それは分かってるんだよって言いたくなるあれ。)、私たちは自分が無力、無能であるからだと解釈する。こうして自己効力感(自分ならできるといえる認知状態)が損なわれると、自尊心、健康、意思決定、人間関係にもダメージを及ぼす可能性も。

これらの理由より、他人に相談するというのはすべての状況において役に立つツールではないらしいです。ただクロスさんが言うには、他人に相談する場合には、自分と相性のいい、共感と客観的なアドバイスのどちらも満たす「チャッターアドバイザー」を見つけると良いと述べています。

頭の中の声をコントロールするツール

ここからは、本書で紹介されている、チャッター攻略のツールをご紹介していきます。

客観的な視点を獲得する

  • 問題から心理的な距離を置く…前回の記事でも書いたように、強烈にネガティブな感情は、目の前の困難、不快な感覚ばかりに注意を向けさせるため、私たちは俯瞰的な視野を失ってしまう。狭まった視野は苦難を増大させ、ますます視野が狭くなる悪循環に陥る。

  そこで、建設的な対処法をとるため、自分を外側の視点から観察する。(イメージしやすいやり方でいい。自分を上から眺めるイメージでも良いし、壁にとまったハエの視点で自分をイメージしても良い。)また、2005年に行われた研究によると、「傍観者(三人称視点で自分を観察したグループ)」は「理没者(一人称視点で自分を観察したグループ)」よりも、適切に問題を理解し、対処できていた。

  

  • 日記を書く…心理学者であるジェームズ・ペネベーカーの研究によると、最も動揺した経験について、15分から20分かけて物語調にして書きだすと、気分の改善や免疫機能の活性化が起こることが分かっている。

  日記をつける行為は経験からの距離を生み出し、私たちは自らの問題を客観的に見つめなおすことができる。

  • 他人のように自分に語り掛ける一人称を使わず、二人称、三人称を用いることでも、問題から距離を置き、冷静になれることが研究結果から分かっている。この手法はNBAのスター、レブロン・ジェームスやノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイなども用いており、簡単かつ有効性が高い。

環境の力を活用する

  • 緑地が人にもたらす好影響…2007年、マーク・バーマンらは参加者を自然豊かな場所を散歩させるグループと、人通りの多いエリアを散歩させるグループに分けて、注意力を測る実験を行った。その結果によると、自然の中での散歩は注意力を向上させることが分かった。

  また、同じように散歩する場所を分けて行った別の実験では、自然の中を散歩した場合、チャッターや反芻を支える脳領域の活動が低下することが分かった。

  • 畏怖の念が幸福度を上げる…心理学者クレイグ・アンダーソンが行ったユニークな実験によると、畏怖の念を誘う体験(山のぼりやスキューバダイビングなど)を行った人々は、ストレスとPTSDの度合いが軽減され、幸福度と人生への満足度、帰属意識などが全体的に増加していることが分かった

  畏怖の念の中に身を置き、自らが小さく感じられる時(自我の収縮と呼ばれる現象)、抱えている問題が小さく思われるようだ。(これは新たに自分以外の、宇宙的、大局的視点を得られるということなのでしょうか?)

  • 環境に秩序をもたらし、不安を減らす…「コントロール感」(思い通りの影響を世界に与える力が自分にあると信じること)は身体的的健康から心の平安や人間関係に至るまで、あらゆる面に影響を与える。また、コントロール感を失っているという感覚は、チャッターを増大させてしまう

  そのため、物理的な環境に目を向け、身の回りの環境を整えることには大きな恩恵がある。いつでも手軽にできる行為が、私たちのチャッターを鎮め、コントロール感を向上させる

「信念」の力を活用する

  • チャッターにも効果のあるプラセボプラセボ(偽薬)もまた、ときに現代の医薬品と同じくらいの力を持つことが近年の研究から分かっている。これは過敏性腸症候群や喘息といった難病のみならず、チャッターでもそうだ。これの面白いところは、「その薬が効くと思えば、効きます。」と伝えられた場合でも、効果があった所だろう。プラセボは自分で作り出すことだってできそうだ。
  • 「儀式」でチャッターに対抗する…古くから、人類には「儀式」というものがあったが、それらのはただの形でなく、実際的な効果を持つことが分かってきた。その原理は先ほど紹介した「環境に秩序をもたらす」に似ている。儀式は私たちに秩序感覚をもたらし、また、その儀式を深く信じること(その儀式が私たちを助けてくれると考える)でそれはプラセボの効果も持つ

  儀式は意図的に、いつでも始められるので、自分なりの儀式を作り出し(日曜日には家族と公園を散歩する、とか、仕事に行き詰ったときは部屋を片付けるなど)、チャッターへの対処に役立てることができる。

まとめ

「Chatter 頭の中のひとりごと」解決編でした。

今回学んだ重要なことは、

  • 客観的に問題を観察して、冷静に対処しよう。
  • 自然を感じてチャッターを軽減しよう。
  • 身の回りの環境に秩序をもたらし、コントロール感を上げよう。
  • 役に立ちそうなものは信じよう。

といったものでした。

私は、一人称以外で自分に語り掛ける手法を取り入れつつ(朝、一日のやるべきことを確認するとき、ネガティブな感情を感じたときによさそうだなと思いました。)、あれこれ考えてしまう時には部屋の掃除をしてみようと思います。

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