結局、勉強は才能なのか?|誰でもできる頭がよくなる方法

  • 自分では頑張っているつもりなのに、点数、偏差値が一向に上がらない
  • 何度やっても数学の問題が理解できない
  • 英単語や歴史のキーワードをおぼえられない
  • そもそも勉強が続かない

こんな思いを抱え、「自分は勉強の才能がないのではないか?」「勉強って才能がすべてじゃん」と絶望している学生さんは、日本全国にごまんといるかと思います。

かくいう私も高校時代そんなことを考えては鬱屈していた一人です。

成績が思ったように伸びない→「勉強は才能がすべて」みたいな5ちゃんのまとめスレを読む→絶望→モチベ低下→勉強時間が減る→成績がさらに伸びなくなる

上記の、地獄のような悪循環をを繰り返していました。

ですが、実際に勉強と先天的な知性というのはどれほどの相関があるのでしょうか。

勉強と知性に関するいくつかの研究をまとめていきます。

目次

勉強は才能がすべて?

勉強とIQの関連

まず初めにご紹介するのは、ヴァンダービルト大学で1971年からおこなれた、5000人の神童を50年にわたって追跡調査した研究(1)です。幼少期に数学的、論理的思考能力に優れていた子どもを大学進学やキャリアまでチェックするという壮大な調査となっております。

さあ、この研究から何が分かったかというと、

  • 子ども時代の天才は案の定成功する…『知ってた』皆が口をそろえて言いそうですが、子どものころ成績が良かった人は、成人後収入が多い傾向にあったそう。
  • 基礎学力テストの成績は正確に頭の良さを示す…こっちの方が今回重要です。「学力テストは才能なんて関係ない!」とおっしゃる努力派の方々もおられますが、調査結果によると、SAT(アメリカの大学進学の標準テスト、日本でいうと共通テスト)の点が高い人はおしなべて全体的な知性(iqのみならず空間認識に関わる知能なんかも)が高い傾向にあるとのこと。

この結果から、勉強成績と知能の水準は相関性があることが分かりました。

IQと遺伝

では、そのIQが、先天的か後天的なのかを見ていきましょう。

ちなみにIQとは、人間の認知能力を測定するための指標のことです。IQの高い人は論理的思考能力や問題解決能力に優れているとされています。

  • カリフォルニア州立大学と韓国の国民大学の、生き別れた一卵性双生児を比較した研究(2)によると、一卵性双生児とだけあって、仕事に対する満足度や精神衛生の高さにまで類似性がみられたのですが、なぜかIQのスコアは、韓国で育った子の方が16ポイント高いという結果になりました。
  • 他の研究においては、子どものIQが受ける親の育て方や家庭環境の影響は、成人後にはほぼ0になり、年をとればとるほど親のIQに近づく(遺伝的影響が大きくなる)なんておぞましい結果も出ています。

以上、結局IQは先天的か後天的か問題に関しては、「100%断言はできないが、IQは遺伝的影響を大きく受ける」ということなのでしょう。

この結果から、勉強の成績の良し悪しは遺伝に左右されるという残酷な真実が浮かび上がります。

ちなみに、たった1分で割と正確にIQが高いか低いかを予測する方法があります。

それはロンチェスター大学の実験で、まずはこちらの動画をご覧ください。

どうでしたか?みなさんはバーがどちらに動いているかわかったでしょうか。

この動画では、大きな画面と小さな画面の2つでバーが動きますが、そのうちの、「小さな画面でバーの動きがよく分かったけど、大きな画面ではよく分かんなかったな」という人はIQが高めな傾向にあるようです。この詳細が知りたい方はこちらへ。

IQ以外に勉強の成績を左右する要素

もちろん、IQがすべてではありません。IQ以外にも、勉強の成績を左右するのでは?という知的要素がありますのでその2つをご紹介します。

まず1つ目は、EQです。これは心の知能指数と呼ばれているものです。

どういったものかというと、「自分が今どんな感情を抱いているか気づける」「ネガティブな感情をコントロールできる」「他社の感情に気づける」といった、感情の認知とコントロールの能力を数値化したものです。

このEQと勉強成績の関連性を調べた、シドニー大学などの研究(3)によると、EQと学業成績に相関がある理由は、EQの高い学生は、受験につきものな、不安、退屈、失望などの学業に悪影響を及ぼすネガティブな感情をコントロールする能力にたけているから。そして、人間関係の管理もうまいため、サポートを多く得られるからだそう。

2つ目の要素は、ワーキングメモリです。これは脳の、情報の一時的保管庫のことで、記憶を数秒の短い時間でとどめておく能力こと。

この能力が低い生徒は学業成績が悪くなるという研究(4)があります。研究者いわく、ワーキングメモリが低いと、教師の指示や問題文の理解、与えられた情報の処理に悪影響を及ぼすみたいで、それが原因で勉強成績が伸びづらいのだそう。

ちなみにこのワーキングメモリの高い人ほど悲観的な思考の影響を受けにくいという研究結果もあります。ここから推察するに、EQとワーキングメモリって何かしら関係性がありそうですね。脳の同じような領域がかかわっているとか。

EQ、ワーキングメモリと遺伝

注目の、EQとワーキングメモリは遺伝で決まるの?に関しては、IQより救いのある結果となっています。

まず、EQですが、これは先行研究58件をまとめたメタ分析によると、EQは遺伝ですべて決まるわけではなく、トレーニングをすると、ちゃんと能力を伸ばすことができることが明らかになっていますーパチパチパチパチ。これは希望的ですね。

ワーキングメモリに関しては、一卵性双生児を対象にした研究において、ワーキングメモリ容量の遺伝率は50%であることが分かっています。中途半端ですね。ただ、IQの遺伝率が70~80%と言われているので、大分ましなのではないでしょうか。

これらより、「EQはトレーニングで伸ばせそう、ワーキングメモリは、大きな期待できないかもしれないけど、やってみる価値はある」といったところでしょうか。どちらも高めておいて損はない能力であることは確かですし。

頭をよくする方法

ここからは、現時点で推奨されている、EQ、IQ、ワーキングメモリを高めて頭をよくする方法をまとめていきます。

  • クリティカルシンキングの能力を向上させる…クリティカルシンキングとは合理的な思考能力のことで、これはどんなにIQが高かろうが持っていなければ宝の持ち腐れになってしまう能力です。

  この能力に優れていると、「思い込みにとらわれない」「いろんな視点から物事を考えられる」など、自分を客観的に観察し、正しいかどうかを検討できるようになります。これは勉強においても役立つのではないでしょうか。 

  この能力を鍛える方法は、自分の思い込みを知るというもので、認知バイアスについて外部から知識を取り込むだけでクリティカルシンキングの能力は有意に向上することが分かっています。大事なことは、自分だって偏見だらけで世界を見ている事実を知るということなんですね。

以下の書籍を読んだりして、自分が知らず知らずのうちに抱えていた認知のゆがみについて学ぶことをお勧めします。私も自分がどれほど偏見を抱えてで生きてきたのか学べました…

おすすめ本https://amzn.to/3MQ74NU めっちゃわかりやすいです。

  • 魚を食う…なんかすっとんきょうな感じがしますが、昔から言われている「魚を食べれと頭がよくなる」という話はあながちウソではありません。魚に含まれているオメガ3は脳の認知機能を向上させ、IQが3ポイントほど上がったというデータもあります。その他にもオメガ3には不安症状を軽減する効果があったりと、EQも高めてくれそう。ちなみに鮭(天然のやつ)、サバ、スズキ、タラなんかが特におすすめ。
  • 感情をコントロールするためのテクニックを活用する…頭をよくするうえでマストなEQを高めるには、自分の感情を知り、うまくコントロールする方法を知ることが必要。普段はその筆頭として瞑想を紹介していますが、(瞑想について詳しく知りたい方はこちら)今回はまた別の方法をご紹介します。

  その方法がリアプレイザルというもので、簡潔にまとめると、「ネガティブな感情がわき上がったら、その原因に対する考え方を変える」というもの。

例えば模試で緊張する場合、

「この模試はいい点数を取ってみんなに自慢するためにあるのではなく、自分の実力を知り、今後の学習方針を最適化するためのいい機会だ」

「この模試で失敗しても、志望校の合否は全く左右しない。ミスをすればするほど、本番前に自分の苦手を知れてラッキーと思ってやる」

みたいな感じでポジティブに物事を見直してみる習慣をつけるわけですね。模試以外にも、毎日の勉強や友達付き合いでストレスがたまった時に、自分の思考や感情を観察しながら、感情そのものや原因を好意的に解釈し直してみる習慣をつけてみると、知能の向上につながるでしょう。

  • デュアルNバック課題に取り組む…これは1958年にキルヒナーさんによって紹介された、ワーキングメモリーの強化方法です。ワーキングメモリーは明確に鍛えられる方法がまだあまりそろっていないので、少々面倒ですが、この脳トレを行って能力を底上げする必要がありそうです。

  どういうものかを簡単に説明すると、nバックのnは、何回前の結果を覚えているかのnで、ゲームによって異なりますが、1バックだと「一回目の計算結果を記憶しつつ、2回目の計算を行い、演算が終わった後に一回目の計算結果をこたえる」みたいな感じになります。これをトレーニングすることで徐々にNの値を増やすという趣旨です。

これは2013年に行われたメタ分析でも効果が認められており、信頼度の高いテクニックといえるでしょう。ちょっと面倒ですが、通学時間や勉強の合間などに、暇つぶし程度に取り組んでみてください。

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その他良さげなトレーニング法…知能を挙げるうえで、上記の4つほどに科学的信憑性はないが、ある程度データのある良さげなテクニックをいくつかご紹介します。

  • ウォーキング…1日40分のウォーキングを週3回のペースで行う実験を行ったところ、一年間で脳のパフォーマンスが上がる結果がイリノイ大学の研究から得られています。ランニングのようにしんどくないし、好きなペースでOKとのことで、続けやすそうです。
  • 地中海式ダイエット…イタリアやギリシャの伝統食を模した食事習慣で、昔から評判のいい食事法らしいです。過去に行われた18件のデータをまとめた研究では、世界中だれでも、脳のワーキングメモリー、注意力、集中力などを向上させることができるとわかりました。地中海式ダイエットについて詳しくはこちら。
  • マインドフルネス…1日20分の瞑想を2週間ほど続けたら、ワーキングメモリが活性化したというデータがあります。瞑想は客観的に自分を見れるようコントロールするトレーニングなので、EQ向上にも効果がありそうです。
  • 筆記開示…自分が体験したネガティブな経験をノートに書きなぐる方法。このメソッドのミソは文章のきれいさにこだわらず、ひたすらに思いうかんだ感情を書きまくること。5週間の継続でワーキングメモリの向上、さらには幸福感まで高めるとのことで、受験期のメンタルケアも含めて個人的にはこの中で一番おすすめ。もうちょっと詳しい記事はこちら

まとめと個人的意見

勉強成績は才能が大きな影響を及ぼすのか。また、知能を向上させるにはどんな方法が良いかをまとめました。

今回の重要なポイントは、

  • 勉強は、IQ、EQ、ワーキングメモリが密接にかかわっている
  • IQは遺伝的影響が大きいため、直接的に向上させることは難しそう
  • EQやワーキングメモリ、クリティカルシンキングをトレーニングで強化することで頭はよくなる!
  • トレーニング方法は様々なので好きな方法で取り組んでよし

以上の4点です。

IQが遺伝的なもので、向上は難しいという事実は残酷な話ですが(私は高校生の頃これを知ってメンタルが終わりました)、そういうもんかと受け入れるよりほかにありません。

この結果を踏まえて私は、先天的な知性そのもの(EQやワーキングメモリ含めた全般的な知性でなく、IQで測る論理的思考能力、空間認識能力など)を向上させようと躍起になることは止めといたほうがいいかなーと思いました。

その代わり、先ほど紹介した様なトレーニング法で感情のコントロール方法や合理的思考を身に着けて、今の自分にとって最善の選択ができるようになる方がよほど効果的みたいですね。

結局のところ、頭を良くしたいという願望には、今の自分を受け入れがたい、違う人間になりたいという、嫉妬をはらんだ欲が潜んでいます。(ちなみにここで”即座”に「違う、自分は自分を向上させたいだけだ」と否定した人は、実際にはそういう欲を持っていることの裏返しです。認知バイアスがあるかもしれません。)そして、「自分は才能がないんじゃないの?」「結局地頭が良くなければ勉強したって無駄だろ」と考えて、不安な感情に身を任せてネットで検索している時間が一番無駄になっていることに自分でも気が付いていません。

ですので感情のコントロール方法や自分を客観的に観察する習慣を身に着けることが、無駄な思考のない効率的な勉強習慣つながって結果的に一番成績を上げられそうです。

散々偉そうに語りましたが、この内容は私が才能の有無にこだわり続けている人間であるからこそ考えられたものです。そうです。上記の才能問答をグダグダと考え続けているのは他でもない私です。

才能に関する話って答えがなくて、本当に難しいです。才能があるに越したことはないですよ、確かに。

ですが、「今の」自分にできる最もよい選択は何なのか。今日紹介したトレーニングを通してこれを見極め、自分にとってのベストな判断ができるようになればいいんですけどねぇ。私は修行が足りないみたいなので、これからも精進しようと思います。皆さんもぜひ、自分に合いそうなものがあったら取り入れてみてください。

  

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